1.新しいスタフィングボックス型バルブについて
従来のスタフィングボックス型バルブの問題点
従来のスタフィングボックスでは、グランドボルトによって締付力が加えられると、この締付力は上層部ですぐ軸に直角方向の分力になって吸収されることが多く、したがって下層部ではこの締付力は急激に少なくなります。
一方、内部圧力は下層部の締付不十分なパッキン内に徐々に浸透し、上層部の締付けが十分なパッキン2巻位の部分ではじめてシールされています。この上層部のパッキンも、バインダなどのシール剤が飛んでしまうと、外部へ漏洩し始めてしまいます。
このような状態に至ると、内部流体はパッキン室内に充満しているため、グランドパッキンを締付ても一時的にはシールできますが、すぐに漏れるようになります。
石田バルブ工業がご提案する新しいスタフィングボックス型バルブ「Twin Packバルブ」
「Twin Packバルブ」は、従来の欠点を完全になくした独特の構造であり、グランドパッキンを一次パッキン室②と二次パッキン室①に充填した二段構えの軸封方式です。
「Twin Packバルブ」のスタフィングボックスの特徴
- シールが完全
一次側パッキンの締付けは、ステムを回すとこれに固定されたクラッチ⑤と、締付金物④のクラッチとの噛合わせによって行われます。回転トルクは締付力に変えられ、パッキンを内部流体側から締付、流体圧を確実に減圧するため、完全に漏れが止められます。 - 強い耐久性
上部の二次側パッキン室は、従来のバルブのパッキン室と同じ構造であり、二次側パッキン室への流体の浸透がほとんどないため、劣化が起こりにくく、耐用年数が長期にわたります。 - 保守が容易
従来のバルブのバックシートは損傷しやすく不安定であり、運転中にバックシートを効かせてパッキンの取換え作業を行うことに難点があります。
「Twin Packバルブ」なら、グランドパッキンがバックシートの代用となっているため、必要があれば二次側パッキンはバルブ開度が中間位置であっても安心して取換え作業ができ、保守が容易です。 - 開閉操作が軽快
グランドパッキンの締付は、ねじのリードによって行われ、片締によるステムの偏在などを生じにくい構造となっています。このため、ハンドルの回転は従来のバルブに比べて極めて軽快です。
2.バルブの取扱について
(1)一次側グランドパッキンの締付け時期
「Twin Pack バルブ」は、下記のような場合に一次側パッキンの締付けを行って下さい。
- 「Twin Pack バルブ」を配管し、試運転を行うとき
- 装置運転中、グランド部より漏れが認められたとき
- 1年に1回位、定期的に締付けを行ってください。パッキンの寿命が長くなります
(2)一次側グランドパッキンの締付け手順
1.ゲートバルブ
- バルブを全開させる(ハンドルは反時計方向―左回転)
- ハンドルを全開位置(手にカチッという感覚のあった位置)で止める
- ロックナット①をゆるめてストッパー②をキーから外して、フリーにする
- ステム頂部レバー③を時計方向(右回転)に約1/2~1回転させる。これで一次側パッキンの締付けは終わりです
- 最後に、ロックナット①を締付けて、ストッパー②を固定し、最初の状態に戻して下さい(必ず忘れずに!)
2.グローブバルブ、および鍛造バルブ(11/2”以下)
- バルブを全開させる(ハンドルは反時計方向回転―左回転)に約11/2~1回転させる。
- ハンドルを全開させる(手にカチッという感覚のあった位置)
- 全開位置より同じ方向(反時計方向―左回転)に約11/2~1回転させる。これで一次側パッキンの締付けは終わりです
(3)「Twin Pack バルブ」取り扱い上の注意
- 装置運転中に全開できないバルブ(例えば、コントロール用などの半開したバルブ、配管末端などに使用するブロック用、ドレン用など)には「Twin Pack バルブ」の特徴が発揮できません。定期修理などの装置停止時にパッキン締付け操作を行ってください。
- 各「Twin Pack バルブ」のヨークには締付け操作方法の説明板が取り付けてあります。
- 装置運転中、グランド部より漏れが認められた場合、締付けを行って漏れが止まったことを確認し、二次側グランドパッキンの増締め、交換ができます。
- ゲートバルブの締付けにおいては、一次側パッキンの締付け完了後、レバー③を左回転(パッキン締付けは右回転)させないでください。左回転させると、クラッチのねじが戻り、パッキンの締付けがゆるんでしまいます。パッキン締付け完了後、レバー③はそのままにしてロックナット①をロックしてください。
- グローブバルブおよび鍛造バルブの締付けにおいて、このバルブを全開させる時は、ハンドル廻し(ウイルキー)を使用しないでください。ハンドル廻しを使用すると、全開時点の感覚がわからず一次側パッキンの締めすぎになります。
- 一次側パッキンの交換には締付金具をゆるめる工具を必要とします。
3.使用可能な特殊流体および範囲
- 熱媒体用
ダウサムA、サームS、K-S-Kオイル、マロサーム、サントサーム、エッソサーム、タフェニール(ナイター)、ハイグロサーム(ナイター)、溶融鉛、溶融ナトリューム、溶融水銀 - 高温度圧蒸気用
- 危険ガス及び液体用
塩素水素(イエローツインパックバルブの項で詳記)、硫化水素、ホスゲン、一酸化炭素、エチルアルミン、塩化エチル、塩化ビニール、酸化エチレン、トリメチルアミン、プロムメチル、モノメチルアミン、アクロニトリール、アンモニア・ガス、酸化プロピレンなど - 公害防止用
亜硫酸ガス、酢酸、二酸化炭素 - 真空用(真空度 最大10-²mm Hg)
- 分子量の小さい気体用
水素、酸素、フレオン・ガス、LPGなど。 - 原子力発電用
4.クラスとサイズおよびタイプ
「Twin Packバルブ」の規格は、当社汎用バルブと共通化させており、API STD 600に準拠していますので、そのPRESSURE-TEMPERATURE RATINGを適用できます。また、ANSI B16.5も同様です。このバルブの標準形は下の通りです。これら標準形以外のものも受注製作していますので、ぜひご相談ください。尚、ご利用頻度の高い150#、300#、10K、20K標準形バルブの主要寸法は別表をご参照ください。
- クラス(呼び圧力)
150#、300#、600#、900#、1500#、10K、20K、30K、40K、63K - サイズ(呼び径)
1/2"~36" - タイプ(種類)
ゲートバルブ、グローブバルブの二種類です。
5.材料
- ボディ材料
「Twin Packバルブ」は、JIS及びAPI STD 600の規格に準拠し、炭素鋼、合金鋼、18-8ステンレス鋼の鋳造または鍛造で製作しています。これらの他にも、モネルなどの特殊材料でも受注製作できます。 - トリム材料
トリムもJISおよびAPI STD 600規格に準拠し、13Crステンレス鋼、18-8ステンレス鋼、ステライト盛金などで製作しています。これらの他にも、モネルなどの特殊材料でも、ご注文に応じて製作します。